へレディタリー/継承

A24公式ページより
ヘレディタリー/継承

*ネタバレ無し

公開:2018
原題:Hereditary
監督:Ari Aster(アリ・アスター)
出演:トニー・コレット、アレックス・ウルフほか

イット・カムズ・アット・ナイトに続き再びA24配給のホラー作品

へレディタリーはサンダンス映画祭でのプレミア上映より数多くの批評家たちに高く評価されています。レビューサイトのほうでも批評家、オーディエンスともに上々です。そして、こういう芸術系作品では珍しく(?)商業的にも成功しており、当初の予想を上回りA24配給の映画としては過去最高の興行収入だそうです。本作を監督したアリ・アスターはなんと長編映画デビュー作!彼の才能をこれでもかというほどに見せつける作品になっています。

ざっくりあらすじ

祖母を亡くしたばかりの一つの家族。謎の多い彼女の死にいまいち悲しめない彼らに次々と降りかかる悲劇。崩れかかっていた家族の絆は崩壊し、互いを傷つけ合う。この悲劇の真相は何なのか。祖母の残した、家族に継承されたものの正体とは

忘れていた恐怖を再び植え付けられる

私はホラーにはかなり耐性のある方で大抵の作品は声が漏れるほどに笑いが込み上げてしまうタイプです。ホラーって怖がらせるために盛り盛りになりがちじゃないですか、そういうのがめちゃくちゃシュールに見えるんですよ。

よく周りにホラー平気なの羨ましいとか言われるんですが、私の持論ではホラーはやっぱり怖がってナンボのもんだと思うんですよ。心底震え上がる事なんて日常生活じゃなかなかないですからね。恐怖も立派なエンターテイメントだと思うんです。そういう意味で最近すごくさみしい思いをしていましたが、ヘレディタリー、やってくれました…本当に、やってくれました…

今作ではあからさまに怖さを煽る表現はほとんどありません。こんなん誰でもビクッとするやんけ!的な音は2回くらいありましたがそれ以外の表現は極めて地味なものなんです。だけどそれが死ぬほど怖い!シャワー浴びてると背後が気になる、明かりのない部屋でなんだか視界の端が気になってソワソワする。こういう誰もが日常で描く小さな不安を最大限に引き出してくる、そんないや〜な雰囲気が全体に漂っています。なんだろうな、畏敬の念に近い感覚?そういう人間の手の届かないものへの感覚をずいっと引き出されます。生理的に無理!な空気感をこれでもかと出してきます笑。だけどこれを待ってたのよ!!!このゾワゾワ感を求めてたのよ!!!と声を大にして言いたいです笑。

高い技術と芸術性

そしてアリ・アスターという監督は本当に才能に恵まれていると思います。登場する厳選された要素、関係性などを美しい映像、音楽で結びつけていて一見するだけでその状況が理解できてしまうハイコンテクストなつくりをしています。スクリーンに映る一つ一つに意味があり、かなり濃厚な仕上がりです。

なかでも私が感動したのがカメラ固定である要素以外がパッと一変する手法です。伝わるかな?笑。タイムラプスの間を抜いて、最初と最後をブツ切りに見せる感じのショットがいくつかあるんですよ。その一つにおもわずキモッッて声が漏れました笑。

他にもスタンリー・キューブリック的なシンメトリー構造であったりウェス・アンダーソン風のセット、撮影手法を使ったりと芸術性の高さがみられますね。そういえばお母さん役のトニ・コレットさんとかシャイニングのお母さんに通ずるものがあるような…。

もうどこを取っても最高に嫌なショットなんですよ、ホント笑。さいっこうに印象に残るし、さいっこうに反吐がでますよ!笑。

隙のないプロット

ホラーといえばわかりやすい脅かし表現のほかにツッコミどころ満載のストーリーっていうのがありますよね。けれどこのヘレディタリーは先述したようにハイコンテクストさのおかげで無駄な疑問を抱かずに映画をみれるんです。これって案外大事で鑑賞中に変なとこに気が散っちゃうともう興ざめですからね。きちんとストーリーが進むごとに「あ、そういうことか…!(ドン引き)」の連続ですよ笑。

オカルト一辺倒ではなく家族劇に重きを置いているのも良かったですね。単純にこの家族やだ!っていう笑。でもそれもわかるというか「あぁ、こういう事あるよね…やっちゃいそうだよね…」という共感を生むんですよね。

後を引く恐怖感。お願いだからオバケであれ!!

私のように日常にちょっとした恐怖を求めている人たちには最高の映画ですよ…一晩寝たくらいじゃこの嫌な感じは消えてくれません笑。というか見た日の晩が一番嫌です、電気消したくない笑。そして映画好きの方には様々な手法が尽くされたこのジャンルでもまだ真新しい表現を体験することができるのでおすすめですね!

そして怖いものが苦手なひと!見ちゃダメ!笑
一人暮らしでついつい夜中に怖い話をググっちゃうくらいの人なら大丈夫ですけど苦手なひとは誰かに誘われても元気よく、「黙れ!ボヘミアン・ラプソディ観るぞ!」って言ってください笑。

とにかくこの映画はホラーとしては最高の出来だと思います。魅力たっぷりな嫌な雰囲気を目一杯楽しめます!もう一度見たい!では今回はこれまで!

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