女王陛下のお気に入り 

バレンタインデー翌日、2月15日に公開された「女王陛下のお気に入り」、早速観てきた。今月行われるアカデミー賞にも複数ノミネート。批評家からの評価も高い期待作。とうとつに無知を晒すんですけど女王の読みって「じょおう」なんですね。「じょうおう」でうまくへんかんできないわけだ〜笑

18世紀初頭のイングランドで繰り広げられる宮廷ドラマ。わがままで政治のわからないアン女王、彼女に仕え、意のままに操る聡明なサラ、そしてサラに助けを求めにきた没落貴族アビゲイル。物語はこの3人の女性を中心にコミカルに、エグ味たっぷりに描かれます。

最高に最低で最悪な宮廷劇

もう何もかもが最悪(賛辞)。全登場人物の基本属性がクズ。愛されたい女王、女王に近く新人にイラつく敏腕女貴族、なんとしてでも成り上がりたい没落貴族。この3人がメインなんだからもうキレイに終わるはずがない笑。3人のやりとりがトゲトゲしくドロドロして馬鹿らしい。どうして人はこういう話が好きなんだろう、困ったものです。一人がひどいことするともっとやれ!って気分になるし楽しい。嫌味の一つ一つがスゴイ切れ味。この馬鹿馬鹿しい物語が最高におかしく、愛らしく、とても切ない。

醜い愛憎劇を美しく魅せる

自然光のみで撮られたという映像。暗闇の中、ろうそくの明かりで浮かぶそれぞれの表情はより美しく印象的に映る。戦時下とは思えない貴族たちのドギツい色の衣装やスローモーションのダックレースは悪趣味な貴族社会の描き方は現代にも通ずるものがある。その中で主要3キャストの衣装はモノトーンを基調としていてとてもシック。とくにサラの衣装はどれも最高にかっこいい。

そして過剰なまでに魚眼レンズを使った超広角ショット。アクションカメラの流行で見慣れた映像だけど映画の中でみるとまた違った効果がある。監督はこういう救いようのないほど醜い人間模様を極限まで傍観者の視点でみせるのがうまい。はたから見るとあまりに馬鹿馬鹿しい。その当人たちの必死さがかわいい。エグければエグいほどおかしさが増して笑ってしまう。

Olivia Colman in the film THE FAVOURITE. Photo Courtesy of Fox Searchlight Pictures. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved
https://www.indiewire.com/2018/12/the-favourite-cinematographer-robbie-ryan-yorgos-lanthimos-1202027430/

表題や各章ごとに印象的なセリフが表示されるんですが恐ろしいまでに規則正しく淡々と整列する文字が異常でかつ美しく、本を読んでいるよう。このスペーシングというのか、それもまた神的視点にさせる。蟻の行列をみる子供の気持ち、アクアリウムを覗き込む気持ちみたいな、そういう箱庭的な世界を覗き込むように感じます。

https://twitter.com/hrishihirway/status/1067102366984372224

オリヴィア・コールマンレイチェル・ワイズエマ・ストーンが主要キャストを務めていますがみんなすごい。女王を愛せるのも、サラに惚れちゃうのも、アビゲイルに震え上がるのも彼女らの演技力あってこそ。特に女王役のオリヴィア・コールマンの演技はすごく感情に訴えかけられます。脇を固めるニコラス・ホルトジョー・アルウィンの愚かしさも最高です。

とにかくどの瞬間を切り取っても醜いのに愛らしく美しい。

あと音がめちゃくちゃいい

最近ASMR流行ってますよね。昔のASMRより今の流行はフェチ感が強くなっててなんだかなぁと思ってるんですがね。私は昔からブラッシングの音やページをめくる音とかが好きな口ですが、この映画は生活音がとっても心地良い。まさに本来のASMR。耳元で聞こえるように前半部分では少し強調気味に生活音が表現されてました。当時の宮廷内に入り込んだ気持ちになれます。

そして場面とともに変化していく音楽表現も巧みでとってもシブい。登場人物や場面の緊張をしっかり表現しています。全てが堕ちていくその瞬間を音楽がしっかり感じさせてくれます。

この勝負、全員負け

どう転んでも地獄。最初からいい結末なんて期待できない。すがすがしいまでに崩壊していく物語は最高のエンターテイメントです。腹から笑うではなく、ほくそ笑む。エグ味を極めた作品ですが鑑賞後の気分はとっても晴れやかです笑。

アカデミー賞是非とも取ってほしいです。おすすめ。

コメント